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調査研究報告書

持続可能な地域社会づくりに資する中小企業経営のあり方
~新型コロナウイルス感染症が地域の持続性に与える影響に注目して~

1. 調査の背景・目的

 近年、企業の成長と持続可能な経済、社会、環境の実現は不可分のものとして捉えられるようになり、企業の社会的責任はますます大きくなっている。グローバルな市場で活躍する大企業においては、「持続可能な開発目標」(以下、SDGs)に関する取組が広がりを見せている一方で、中小企業においては大企業と比較してSDGsに対する認知度は低く、取組も進んでいない。中小企業においても自らが基盤を置く「地域社会の持続可能性」への貢献という「ローカライズ」された形での取組を進めていくことが必要であると考えられる。
 持続性に資する取組が要請されるようになる中で、2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が地域の持続性を脅かしている。新型コロナによって地域が受ける影響について現状把握をするとともに、「コロナ後」の世界を展望し、地域の持続性に資する経営の方向性について検討することが必要である。
 以上を踏まえて、本研究では、新型コロナが持続可能性に与えている影響について現状を把握するとともに、「アフターコロナ」の地域社会について展望し、地域の持続可能性に貢献する中小企業経営のあり方について検討を行うことを目的とする。

2. 調査方法

(1)文献・統計調査

 既存の文献や統計を用いて、持続可能性概念の整理や、新型コロナによる経済・社会への影響の整理、「アフターコロナ」における地域社会の展望を行った。

(2)インタビュー調査

 中小企業論や経営学等の専門家を対象としたインタビュー調査を実施し、「アフターコロナ」における地域社会の持続可能性に資する中小企業経営のあり方について、意見を収集した。また、中小企業を対象としたインタビュー調査を実施し、新型コロナによる影響や地域社会の持続性に貢献する取組や課題ついて確認を行った。

3. 調査結果

第1章 新型コロナが持続可能性に与えている影響の整理

1.経済への影響

(1)新型コロナにより世界経済は縮小に向かう

 IMFの「世界経済見通し 改定見通し」(2020)によると、2020年の世界のGDP成長率は11年ぶりにマイナスに転じると予測されている。特に、経済が成熟した先進国において新型コロナの影響が大きくなっている。一方で、2021年については、2020年後半にパンデミックが収束し、拡散防止措置を徐々に解除することが可能になるという仮定の下、政府支援もあって世界経済の回復・成長が予想されている。

(2)日本の経済成長率は大幅低下

 2020年1~3月の実質GDPは消費増税による影響を受けた2019年10~12月期に引き続きマイナス成長となった。3月以降の外出やイベントの自粛による消費の落ち込みや、諸外国のロックダウン政策に伴う輸出の大幅減、前期に続く低調な住宅投資等が原因と考えられる。
 新型コロナの影響が本格化に見られた2020年4~6月期の成長率は、前期比大幅な下落となり、年率換算では戦後最大の落ち込みとなった

(3)家計の消費支出は大幅減

 家計調査によれば、新型コロナの国内への影響が本格化した2020年3~5月期の家計消費は前月比それぞれ大幅な下落となった。
 品目別にみると、緊急事態宣言が発令されていた5月期では、住居に加えて、被服及び履物、交通・通信、教養娯楽等のサービス消費で下落幅が大きく、外出やイベント自粛による影響を確認することができる。

(4)製造業の生産も低迷

 新型コロナにより製造業も大きな影響を受けている。鉱工業生産指数は消費増税の影響を受け一時大幅に下落した後、回復傾向にあったが、新型コロナによる需要の低迷や感染防止のための生産設備の稼働の停止等を受けて再び大幅な下落に転じた。

(5)資金繰りの悪化
①半数以上の中小企業が資金繰りに苦しむ

 日本銀行によると、資金繰り判断DIは大企業、中堅企業、中小企業のすべてにおいて、2019年12月の調査結果から2020年3月、6月にかけて連続しての下落となった。下落幅は、2020年3月から6月にかけて拡大しており、新型コロナによる企業への影響を確認することができる。中小企業については、下落幅は中堅・大企業と同程度である一方で、DIの水準で見ると、2020年6月期において、中小企業はマイナスに達したことから、半数以上が資金繰りに苦しんでいたことが分かる。

②宿泊・飲食サービスをはじめ多くの産業で資金繰りが悪化

 2020年9月の調査では若干の回復が見られたものの、新型コロナが拡大してきた2020年3月、6月において、建設業を除く産業でDIが低下しており、多くの企業で資金繰りが悪化したことが分かる。特に下落幅が大きいのは宿泊・飲食サービス業、次いで対個人サービス業であり、外出自粛や移動制限等の影響が深刻であることを確認することができる。

(6)関連倒産件数の増加

 2020年10月28日時点では新型コロナウイルス関連倒産は全国で656件となっている。新型コロナの影響による生産活動の停止・縮小や営業活動の停止・縮小、業績の落ち込み、資金繰りの悪化等により、経営を続けることが困難となった企業が増えていると考えられる。
 都道府県別に見ると、東京都が152件と突出していることが分かる。立地している企業数が多いことに加えて、緊急事態宣言の発令・延長に伴う外出自粛の長期が要因として考えられる。

(7)非正規雇用者数の減少

 新型コロナの拡大に伴い、完全失業率(季節調整値)は3月以降上昇傾向にある。
 就業者数の推移を見ると、2月から4月にかけてパートやアルバイトといった非正規雇用の職員・従業員が著しく減少していることが分かる。企業の資金繰りが厳しい中で、非正規雇用者が雇用調整対象の中心となっている可能性がある。

2.社会への影響

(1)「新しい生活様式」の広がり

 新型コロナの拡大を受け、2020年5月に厚生労働省より「新しい生活様式」が公表され、これまでの生活を変化させていくことが求められている。

(2)購買行動の変化

 2020年2月から4月にかけて、大手ECサイトのユーザー数が増加している。新型コロナの拡大を受け、「新しい生活様式」の徹底や外出自粛等が要請されたことにより、人が密集するスーパーや商業施設等での買い物を避け、オンラインでの買い物を選択する消費者が増えたと考えられる。
 また、支払い方法についてもスマホ決算等のキャッシュレス化が増加しており、新型コロナの拡大以前から進んでいたキャッシュレス化が一層進展していると捉えることができる。

(3)働き方の変化①

 テレワーク等に代表される働き方の推進についても、新型コロナの拡大以前から謳われてきたが、感染拡大を受け「新しい生活様式」の実践が余儀なくされたことにより急速に普及が進んでいる。
 株式会社パーソル総合研究所が実施したアンケート調査(2020)によると、3月から4月の間にテレワークの実施率が2倍以上増加した。また、6月の調査ではテレワークの実施率は低下したものの、3月時点の実施率を上回っており、新型コロナの拡大を機に、引き続きテレワークを実施する労働者が以前よりも増える可能性がある。
 また、従業員規模別に見ると、従業員数が多い企業ほどテレワークの実施率が高いことが分かる。

(4)働き方の変化②

 年々副業・兼業を希望する就業者数及び有業者全体に占める割合はいずれも増加している。新型コロナの影響によりテレワーク等の普及が進み、移動時間の削減等で生まれた時間を有効活用することで、副業・兼業を行う就業者は更に増える可能性がある。

第2章 地域社会の持続可能性の考え方の整理

1.持続可能性に関する考え方と新型コロナの影響

(1)持続可能な開発目標(SDGs)について

 国際連合を中心として、地球環境を維持しながら経済・社会を発展させていく取組のあり方についてこれまで議論が積み重ねられてきた。議論を通して「将来世代の欲求を満たしつつ、現代の世代の欲求も満足させるような開発」と定義される「持続可能な開発」概念が提唱され、これを達成するための国際的な取組の方向性や目標がこれまで設定されてきた。「アフターコロナ」においても、大企業や一般消費者のSDGsへの関心が一層高まり、中小企業にとっても取引関係や販路の確保にあたって、SDGs等持続可能性への貢献の取り組みが求められるようになる可能性がある。

(2)学習地域論・(3)創造都市論


理論 内容
学習地域論 ・ 学習地域論は、都市社会学者であるフロリダ(1995)等により提唱された概念である。

地域の中小企業が積極的に交流し、その知識を向上させるとともに、従業者への教育、地域コミュニティとの交流等を通して、その知識を住民に伝達し、地域に蓄積していくことが地域の持続可能性とって重要であるといえる。

新型コロナにより、暗黙知を伝達する上で重要なコミュニケーションをとることが難しくなり、地域への知識の蓄積が抑制されている可能性がある。今後、長期間にわたり密なコミュニケーションが抑制されるとすれば、地域への知識の蓄積不足により地域の持続性にも影響が出る可能性がある。
創造都市論 ・ 創造都市論は、学習地域論と同じフロリダが提唱した概念である。

近年、多文化共生等、多様性や寛容性を重視する概念に注目が集まっているが、地域においても「よそ者」に排他的にならず、クリエイティブな人々がそのクリエイティビティを発揮できる環境を作っていくことが重要である。

新型コロナによる地域の「排他性」、「不寛容」の増長は、クリエイティブ経済における持続可能な成長を妨げるとともに、人々が豊かに生きるという社会的な側面でも持続性を妨げるものである。一方で、地方へのUターンやIターンの関心は新型コロナの影響により高まっており、コロナ禍を地方が成長するためのチャンスと捉えることもできる。アフターコロナにおいて地域がこのような「排他性」、「不寛容」を乗り切ることができるかが問われている。

(4)地域経済循環

 地域が持続的に存立するためには、地域の住民が働く場所があり、得た所得を使って地域内で消費し、次の世代を育てていくという「地域経済の好循環」が成立していることが重要である。こうした循環の起点となるのが、製造業や観光業等の地域の外から資金を稼ぎ出す「基盤産業」である。
 地域経済循環の中核を担うのは地域の中小企業であり、「地域外への販売等で地域に資金をもたらす」、「地域住民の雇用により住民に所得を分配する」、「地域で賄えるものは地域で調達する」といったことが、地域の持続性を高めることにつながる。
 新型コロナの影響により、①域外からの資金の流入の減少、②関連地域内企業への波及と住民雇用の減少、③住民の所得減少による地域内での消費の停滞といった地域経済の「悪循環」のような状況に陥っていると考えられる。

2.インタビュー調査に向けた論点の整理

(1)インタビュー調査の位置づけ

 文献調査においては、新型コロナが経済・社会に与えている影響の整理(第1章)と持続可能な地域社会について考える上で参照すべき理論の整理(第2章1.)を行った。
 一方で、新型コロナの影響については現在進行中の事象であること、「地域の持続可能性」は理念的な要素を多分に含むことを踏まえ、仮説の検証ではなく、様々な意見の収集・整理することが重要である。

(2)インタビュー調査で明らかにするリサーチ・クエスチョン

 「アフターコロナ」における地域の持続可能性に資する中小企業経営のあり方について展望することを目的として、以下の3つのリサーチ・クエスチョンを設定した。

RQ1 「地域の持続可能性」とはどのようなものか
RQ2 「アフターコロナ」の地域においてはどのような変化が起こるのか
RQ3 RQ1、RQ2を踏まえた「アフターコロナ」の中小企業経営の方向性
(3)インタビュー調査対象について

(1)を踏まえて、以下のような狙いのもと専門家及び中小企業に対してインタビュー調査を実施した。

分類 インタビュー調査の狙い
専門家
それぞれの専門に照らして、新型コロナによる地域社会への影響や、今後地域社会に起こりうる変化について意見を聴取
・ 上記影響や変化を踏まえた上で、中小企業に求められる取組の方向性について示唆を得る
中小企業 ・ 新型コロナによる地域社会への影響や、自社の影響について「生の声」を把握

「アフターコロナ」の地域社会の持続性に資する経営の方向性に関する具体的な事例や取組を進めていく上での課題等を把握

第3章 インタビュー調査結果

1.インタビュー調査の概要

 以下の有識者・中小企業にインタビュー調査を実施した。インタビュー結果の概要は以下の通り。

<有識者>
有識者名 所属 ポイント
三井 逸友 氏 横浜国立大学
名誉教授
・ ビジネスを通した社会貢献の取組は、企業の社会的価値や社員の士気の向上に繋がる。

従業員への負担に配慮しつつ、ビジネスとして持続可能な形で地域への貢献に取り組むことが重要である。
関 智宏 氏 同志社大学
商学部
教授

消費者ニーズに即した商品・サービスを提供することにより持続的な経営を目指す上で、自社単独では難しい取組は他社と連携して行動していくことが求められる。

従来から地域に根差し、地域ともに歩んできた中小企業は、これまで構築してきたネットワークを活用できることが強みである。
長山 宗広 氏 駒澤大学
経済学部
教授

コロナ禍でコミュニティの同質化が進行しているが、イノベーションの創出に貢献できるのは、多様性に満ちたコミュニティである。

中小企業は、フリーランスと連携し、共同学習のコミュニティを築き上げることで、地域の学習機能の持続的な発展に貢献することができる。
中島 智人 氏 産業能率大学
経営学部
教授
・ 地域の人々との信頼関係や結びつきは、中小企業だからこそ活用できる「資源」である。

地域貢献の活動に取り組み、互恵関係を発展させることで、自社が活用できる地域資源を増やすとともに、地域社会の持続可能性を高めることができる。
大貝 健二 氏 北海学園大学
経済学部
准教授

リスクに強い持続可能な地域社会を実現するためには、平時より地域内のネットワーク形成・強化に努め、「地域経済循環」と「地域内再投資」を意識した経営に取り組むことが重要である。
許 伸江 氏 跡見学園女子大学
マネジメント学部
准教授

経営者がリーダーシップを発揮して社員と地域コミュニティを繋ぎ合わせることで、地域の持続可能性に資するコミュニティを築き上げることができ、また自社の社員の成長機会を創出することができる。

<中小企業>
企業名 業種 概要
有限会社
秋村泰平堂
製造業
(提灯の製造・販売)

新型コロナの影響より売上が減少。対面での営業が行えない代わりに、情報発信、ECサイトの運営等を実施
・ 地域貢献の取組として職場体験を行っていたが、自社へのメリットが見えにくいことを課題として実感
株式会社
京都瑞松園
小売業
(宇治茶等の販売)
・ 新型コロナの影響により店舗販売の売上が減少

お茶の組合や経営者の会等のコミュニティによる関係づくりに取り組んでいたことで、新型コロナを乗り越えるための取組や地域貢献の取組を実現
株式会社綿善 宿泊業
(旅館の運営)
・ 新型コロナの影響により宿泊客数が大幅に減少

新型コロナを機に小学生が自習をする場所と食事を提供する取組や地元伝統産業を体験できる祭りの開催等、地域貢献の取組を実施
株式会社
奥谷金網製鉄所
製造業
(打抜金網の製造・販売)
・ 新型コロナにより対面での営業や展示会の出展等に影響が出ている
・ 新型コロナ以前から地球環境維持に貢献した製品の開発や地元中学校の教科書への事例掲載等を実施

第4章 「アフターコロナ」の地域の持続可能性に資する中小企業経営の方向性

1.持続的可能な中小企業経営と地域の持続可能性は不可分

 企業経営においては、第一義的に自社の利益を最大化することが重要であるが、多くの中小企業にとって、地域は、自社の製品の販売や素材・部品の調達、雇用の確保等、企業活動の基盤となる「市場」であると同時に、従業者が居住する「生活の場」でもある。立地する地域の持続可能性が損なわれると、企業活動や従業者の生活基盤自体が損なわれ、持続可能な経営は難しくなる。
 アフターコロナにおける自社の持続的な経営を実現するためには、地域の持続可能性の向上に中小企業が「自分ごと」として取り組んでいくことが必要である。

2.新型コロナによるコミュニケーションのあり方の変容とその影響


地域の「学び」の蓄積の阻害と
「学び」やコミュニケーションのあり方の変容


新型コロナにより、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションをとることが難しくなり、地域への知識の蓄積が抑制されている。

今後、長期間にわたり密なコミュニケーションが抑制されるとすれば、知識の蓄積不足により地域の持続性にも影響が出る可能性がある。

新型コロナの影響によりweb会議ツール等の活用が急速に広がったことで、オンライン空間を利用した「テーマコミュニティ」が増加しており、空間的制約を受けない学びの場が、今後地域への学びの蓄積において大きな役割を果たす可能性がある。

さらに、在宅勤務が増加したことで、コワーキングスペースにおいて異質な人々との連携が生まれやすくなったことも、「新結合」によって生じるイノベーションを促進し、地域の持続可能性を高めることにつながる可能性がある。

これまで中小企業のネットワーク構築は、食事や接待等を含むフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションによるものが多かったが、新型コロナの拡大によって、こうした「密」なコミュニケーションは忌避されるようになった。

web会議ツールと通じたオンラインでのやり取りが急速に普及したことで、こうした傾向は新型コロナ収束後も継続する可能性がある。今後はオンラインとオフライン双方が用いられる「ハイブリッド」なネットワーク形成が主流になると考えられる。

3.新型コロナによる社会生活の変化(コミュニケーション以外)


働き方の変化


新型コロナ以前より普及が促進されていたテレワークであるが、新型コロナ拡大によって急速に増加した。政府は、普及したテレワークの定着を推進しており、今後新たな働き方として定着することが見込まれる。
・ テレワークの拡大により副業・兼業の増加を促進すると考えられる。


購買行動の変化


財やサービスにコストパフォーマンス以外を求める消費のあり方は、ウィズコロナの時期が長引くほど定着していくと考えられ、今後の企業の商品開発の際の視点として重要になると考えられる。

「新しい生活様式」の徹底や外出自粛等が要請されたことにより、ECサイトの利用者の増加やキャッシュレス化が進んでいる。


その他の社会意識の変化


新型コロナが都市部を中心に拡大したことを受け、Uターン・Iターンや地方での転職希望者が増加しており、こうした人材は「地域の外を見て学んできた人材」であると同時に、「地域に愛着を持つ人材」であり、地域に新たな「学び」をもたらすことで、地域の活性化や持続可能性向上の起点となりうる。

新型コロナによる地域の「排他性」、「不寛容」の増長は、クリエイティブ経済における持続可能な成長を妨げるとともに、人々が豊かに生きるという社会的な側面でも持続性を妨げるものである。

4.新型コロナによる地域経済循環の抑制

 地域の持続可能性を経済的な側面から捉えると、「域外から資金を稼ぎ出し、稼いだ資金を取引や雇用・消費を通して地域内で循環する」地域経済循環が成立していることが重要である。新型コロナの影響により国内外の需要減少による製造業の不振や、移動制限・イベント自粛による観光業や飲食・サービス業の不振を起点として、地域経済循環は停滞し、地域の経済的な持続性は損なわれていると考えられる。

5.「アフターコロナ」における中小企業経営の方向性

「アフターコロナ」における中小企業経営の方向性について整理する。
項目 変化を踏まえた「アフターコロナ」に
おける地域の持続可能性に貢献する
中小企業経営の方向性
1. コミュニケーションへの変化への対応
オンラインコミュニティやコワーキングスペースを活用した「学び」を支援し、社員のスキルの維持・向上を図るとともに、「学び」の蓄積により、地域の持続可能性に貢献する

オンライン・オフラインの「ハイブリッド型」のコミュニケーションスタイルを有効活用することで、時間的・金銭的コストを削減にもつながる

また、対面ではコミュニケーションを取りにくかった社内外の人々の交流を促進し、新たなアイディアの創出や協業関係の構築、コミュニティの提供等を行うことで、人々のウェル・ビーイング(幸福感や満足感)の増進にも寄与しうる
2. 働き方の変化への対応
テレワークや時差出勤等の柔軟な勤務体制の導入により、ワークライフバランスや効率化・士気向上による生産性の向上を促進し、自社や地域の持続可能性を高める

副業・兼業等新たな働き方の導入により、人件費削減や社員の収入補填といった効果だけでなく、地域への「学び」の蓄積、社会関係資本の形成、情報の伝達・対流によるイノベーション促進といった効果も見込まれる
3. 購買行動の変化への対応
「エッセンシャル消費」や「応援消費」、「安全」・「豊かさ」を求める消費等の購買行動の変化を新たな財やサービスを提供する「機会」として活用する

ECを活用した販路の拡大(販路の複数化による未知のリスクへの備え)、キャッシュレス決済を導入する
4. その他の社会意識の変化への対応
自社の魅力向上、「排他性」を廃したオープンな地域づくりへの貢献を通し、増加する移住希望者の受け皿を整備する
5. 地域経済循環の抑制への
対応

地域内の財やサービスが企業から「選ばれる」よう、品質向上やコスト削減に取り組むことで、地域産業の競争力を向上させるとともに、地域経済循環を促進する
◆ 地域外への販売等により資金を地域に呼び込む

「学び」の提供による地域の人々のスキル向上、地域内の素材や部品等の品質向上等を通して、地域内からの調達や雇用を促進し、波及効果を高める
6. その他の重要な視点
地域企業や地域の人々との社会関係資本の構築に平時から取り組むことで、危機発生時のリスクを軽減する

SDGsの枠組みを参照して自社の事業を見直すことで、自社のアピールポイントや今後の取組の方向性を明らかにする
◆ コロナショックの経験を活かし、有事の際の備えとしてBCPを策定する

以上

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