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調査研究報告書

中小製造業の採用活動に関する調査研究~技能人材の確保に向けて~

1. 調査の背景・目的

 景気拡大に伴って雇用環境は改善し、労働市場は供給側優位の売手市場となっている。こうした人手不足の状況は、労働力人口の減少に伴って、今後も持続することが見込まれ、企業は様々な採用活動上の工夫に取り組んでいる。
 こうした中で、経営資源の制約やノウハウの不足に起因して、人材獲得競争において大企業に後れを取っている中小企業も多く見られる。中でも中小製造業は、単純な労働力ではなく、自社の事業に関連する特定の技能・スキル・専門性を有する、または今後習得することが見込まれる人材(以下、技能人材という。)の確保を必要とするため、大企業や先進企業に劣らない採用活動上の工夫を行う必要がある。
 以上を踏まえて、本研究は、経営資源に制約のある中小製造業の技能人材の確保におけるポイントを明らかにし、今後もますます深刻化することが見込まれる人手不足に対応するための取組の方向性を示すことを目的とする。

2. 調査方法

(1)文献・統計調査

 既存の文献や統計を用いて、我が国全体の人手不足及び中小製造業の人手不足の実態について確認するとともに、政府の政策のトレンドについて整理した。さらに、本研究に関連する先行研究についても整理を行い、本研究における分析の方針を設定した。

(2)アンケート調査

 中小製造業の採用担当者を対象としたアンケート調査及び、就職を希望している学生と転職を希望している就業者向けのアンケート調査を実施した。

(3)インタビュー調査

 中小製造業11社(アンケート調査協力企業4社を含む)及び公的支援機関2機関に対してインタビュー調査を実施した。

3. 調査結果

第1章 我が国の人手不足の行方と中小製造業の現状

1.今後の人手不足の行方

(1)生産年齢人口の減少により、人手不足は慢性化する可能性あり

 生産年齢人口の中長期的な減少が見込まれていることは、人手不足が中長期的に慢性化する可能性を示している。

(2)地域別の労働需給の見通し

 パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計 2030」(2018)によると、2030年時点においても全国的に人手不足が続いていることが分かる。首都圏において、労働力の超過需要が特に大きくなっている背景としては、サービス業等人手を必要とする労働集約型産業が集積していることが、その一つとして考えられる。

(3)労働市場の実態①:新卒(大卒・高専卒)市場の労働供給は今後伸びない

 近年の大学(学部)の卒業者数は、55万人程度で推移し、横ばいである一方で、大卒者に占める就職者の割合は上昇傾向にある。「就職も進学もしていない者」の数も減少傾向であり、大卒の労働供給力は限界に近いと考えられる。
 一方、近年の高等専門学校の卒業者数は1.6万人程度で推移し、「就職も進学もしていない者」の割合は既に低い状態で推移しており、労働供給力は現状で限界に達している。

(4)労働市場の実態②:転職市場は今後も拡大見通し

 転職者数は増加基調に入った2010年の283万人から2018年には329万人にまで増加しており、今後も労働力の流動化は進むことが予想される。
 労働力の流動化は、人手不足にある中小企業にとっては、中途採用において好機である一方で、自社の人材が流出しないように人材定着に力を入れる必要がある。

(5)労働市場の実態③:女性・シニアは労働力人口の「伸びしろ」

 労働力人口の増減内訳に注目すると、男性の労働力人口は、リーマンショック以降の急激な落ち込みから緩やかな増加に転じつつある。一方で、女性や高齢者の労働力人口の増加が顕著であり、労働力人口全体の押し上げに寄与していることが分かる。女性と高齢者の労働市場への参入は「伸びしろ」があると考えられ、今後女性やシニアの採用を重視する必要がある。

(6)労働市場の実態④:外国人労働者は今後も増加

 外国人労働者数は、2014年の約78.8万人から2018年には約146.0万人に達し、近年急速に増加している。2019年には「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が施行され、今後5年間で最大35万人程度の外国人労働者を受け入れる方針である。
 今後も外国人労働者市場は拡大することが見込まれ、人手不足で課題を抱える中小企業は、外国人労働者の雇用も念頭に置いた採用戦略・社内環境整備を講じる必要がある。

2.中小製造業の人手不足の実態

(1)中小製造業の人手不足感は、サービス業と同水準まで強まった

 サービス業については、2012年時点では、建設を除くと最も人手不足感の強い産業であったが、省力化投資の進展を背景に近年は緩やかに推移している。一方、製造業の人手不足感は急激に進行しており、2018年時点ではサービス業の水準まで強まった。

(2)「技能人材」が不足する中小製造業

 経済産業省実施のアンケート調査によれば、製造業企業において確保に最も課題がある人材は、製造技術や生産管理に従事する「技能人材」である。

(3)職種別の従業員の過不足状況

 厚生労働省実施の「労働動向経済調査」は、業種別に職種ごとの人手不足感を調査している。同調査によれば、「事務」や「サービス」、「管理」といった人材の不足感よりも、「専門・技術」や、「技能工」といった技能人材の不足感の方が大きい。

(4)中小製造業は採用による人手不足解消を重視

 経済産業省の調査によれば、大企業・中小企業ともに、現在重視している取組は、新卒採用や中途採用であることが分かる。また、今後重視する取組としてはIT投資等の割合が大きくなるものの、中小企業においては採用を最も重要視する傾向にあることが分かる。

3.まとめと本研究の位置づけ

 中小製造業の特徴としては、技能人材の確保において課題を抱えていること、人手不足の対応策の方向性として、IT等の活用による省力化投資よりも、人材の採用を重要視していることが分かった。単純労働者の確保ではなく、技能人材の確保のためには、採用活動のプロセスを分解して分析・検討を行うとともに、求職者等労働供給側のニーズを的確に把握することが必要であると考えられるが、中小製造業に関する研究について、こうした点に注目した研究は十分ではない。
 本研究においては、製造業の中小企業に注目し、アンケート・インタビューを通して、採用活動における課題を把握するとともに、有効な採用活動のあり方を提示する。

第2章 中小企業の人手不足に対する政府の認識・関連施策

1.政府の認識・方針

(1)生産性の向上

 日本経済再生本部「成長戦略フォローアップ」(2019)において、政府は中小企業の生産性向上のため、業種の特性に応じた取組を推進している。例えば、製造業においては、ものづくり補助金、IT導入補助金等により、設備・IT導入を引き続き推進するとしている。

(2)採用活動

 日本経済再生本部「未来投資戦略」(2018)において、「生産性を最大限に発揮できる働き方の実現」の施策の一つとして「多様な選考・採用機会の拡大」が謳われている。具体的には、新卒一括採用から通年採用への採用形態の転換、中高年齢者の採用促進、「中核人材」の採用促進といった施策を掲げられている。
 採用形態の転換に関する動向として、2019年4月に、新卒学生の通年採用の拡大について経団連が大学側と合意したことが発表された。これにより、学生が大企業の選考に参加できる機会が増え、中小企業の人材確保が今以上に困難になることが予想される。

(3)多様な人材の活躍推進

 政府は成長戦略上で、今後の労働供給力として期待される女性・外国人・高齢者の活躍推進を謳っている。
 中小製造業もこうした時流に乗り遅れないように社内制度の整備や採用活動の設計を行う必要があると言えよう。

2.公的機関・民間団体による支援

 企業の採用活動の支援を行っている公的機関や民間団体の取組の概要は以下の通りである。

組織 取組内容
公共職業安定所
(ハローワーク)
・ 厚生労働省からの指示を受け、都道府県労働局が地域の産業・雇用失業情勢に応じた雇用対策を展開しており、その窓口となる施設
・ 職業相談・紹介業務、求人受理・開拓業務、再就職支援業務等を行っている
若年者のための
ワンストップ
サービスセンター
(ジョブカフェ)
・ 都道府県が主体的に設置する、若者の就職支援をワンストップで行う施設。現在香川県を除く46の都道府県に設置
・ 若年者が自身に合った仕事を見つけるための様々なサービスを1か所にまとめ、それらを無料で提供
・ 企業は無料で求人を公開できるほか、若者と交流できるイベントの開催、採用・人材育成に関する相談、企業向けセミナーの受講等を行うことができる施設もある
日本貿易推進機構
(JETRO)
・ 企業の外国人材の活躍推進支援を目的として、外国人材活用に関する必要な手続、イベント等の情報をまとめたポータルサイトを設置。企業と外国人就労希望者双方を対象とするワンストップの窓口となっている
・ 2019年より東京、大阪、名古屋、福岡に「高度外国人材活躍推進コーディネーター」を配置。高度外国人材が活躍するための就労環境整備、採用後の定着までを継続してサポートする「伴走型支援」を行い、日本全国で高度外国人材の活躍を推進
株式会社
日本人材機構
・ 株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)の100%子会社
・ 有料職業紹介事業、労働者派遣事業、人材育成のための研修業務、人材採用又は転職にかかわる広告・ウェブサイト等の調査、企画、制作、運営及び広告代理業務、それらに伴うコンサルティング業務等を行う機関
・ 同機関が実施する「伴走型支援サービス」は、企業の経営課題に対し、コンサルティングや経営幹部人材の紹介を実施することで経営課題の解消を目指すもの
・ 同機関が運営する求人サイト「Glocal Mission Jobs」では、地方での労働を望む都市部の求職者を中心に地方企業とのマッチングを図り、地方の魅力発信を行っている

 (出所)各機関ウェブサイトより作成

第3章 先行研究の検討と本研究の方針

1.中小製造業の採用活動に関する先行研究

(1)ものづくり産業の人手不足・採用に関する研究

 ここでは、独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した「ものづくり産業を支える企業の労働生産性向上に向けた人材確保・育成に関する調査結果」(2017)について整理を行う。結果は以下のように整理することができる。

概要
・ ものづくり産業の企業は新卒採用よりも中途採用を実施
・ ものづくり産業の企業が中途採用時に最も重視するのは「ものづくり産業で働いた経験」であり、続いて「年齢が若いこと」である
・ 過去3年以内に女性を採用した企業の割合は、新卒、中途ともに従業員規模が小さくなるほど少なくなる傾向にある
・ 企業規模が小さくなるほど、人材の定着率が悪くなる傾向にある
・ 概ね企業規模が小さくなるほど、「応募がない・少ない」と感じている企業の割合が大きくなる
・ 概ね従業員規模が小さいほど若い人材の採用、自社の採用の応募数、求める人材の採用において課題を抱えている
・ 人材定着を促すために取り組んでいる取組は企業規模によって差が出る。特に、従業員数が300人以上の企業はそれ未満の企業と比べて、様々な取組を実施しており、人材の定着にその豊富な経営資源を投入している
(2)中小企業の人材確保・定着に関する研究

 ここでは、中小企業庁(受託:みずほ情報総研株式会社)「平成28年度 中小企業・小規模事業者の人材確保・定着等に関する調査 作業報告書」について、本研究との関連に注目し検討を行う。結果は以下のように整理することができる。

中小企業の人材採用・定着において有効な取組
区分 ポイント
採用ルート ・ ハローワーク、親戚・知人・友人の紹介、新聞・雑誌等の紙媒体の求人広告
・ 就職者は、就職ポータルサイトの活用も行っており、今後は中小企業も積極的に活用する必要あり
採用活動時に
求職者に
伝えるべき情報
・ 就職者が重視した事項は、「仕事内容・やりがい」、「給与・賞与の水準」、「就業時間・休暇制度」等
・ 企業は採用時に上に挙げた情報を積極的に求職者に伝えることで、就業前後のイメージギャップを小さくすることが早期離職を防ぐことにつながる
求職者へ
自社情報を
伝える手段
・ 以下の3つのステップを踏むことが重要
ステップ1:「各種の求人広告」、「企業が情報発信するウェブサイト」等を通じ、働くにあたっての基本情報を提供
ステップ2:「経営者による面談」「採用担当者による面談」等を通じ、ステップ1の内容を必要に応じて詳細に提供するとともに、求職者からの質問に回答
ステップ3:「職場・工場見学」「職場・工場体験」「希望配属先の従業員との面会」等を通じ、「職場の雰囲気」「実際の仕事内容」を体験
人材定着に向
けて取り組むべ
き人事施策
・ 成果や業務内容に応じた人事評価、能力や適性に応じた昇給・昇進
・ 時間外労働の削減・休暇制度の利用促進、勤務時間の弾力化(フレックスタイム制・短時間勤務等)職場環境・人間関係への配慮(ハラスメント防止等)、作業負担の軽減や業務上の安全確保の徹底
・ キャリアプランやライフプラン、希望に応じた配置に関する相談体制の確保
人材が定着す
る職場づくり
・ 経営方針等の従業員への伝達、採用活動・定着支援策への参加
(3)本研究における分析の方針

 本研究においては、先行研究で十分に検討されていない中小製造業における採用活動のポイントを明らかにすることを目的として、中小製造業と求職者を調査対象として、人材確保・定着の実態や取組についてアンケート調査を実施する。加えて、中小製造業及び採用を支援する機関を対象としたインタビュー調査を実施し、アンケート調査では十分に捕捉することができない、課題や取組の有効性の背景要因について明らかにする。
 以上のような目的の下、本研究においては人材の確保・定着に至るプロセスを以下図に示すような枠組として整理する。

人材の確保・定着に至るプロセス

第4章 中小製造業の採用活動の実態・ポイントの計量分析

1.アンケート概要

 本研究で実施したアンケート調査の概要は以下の通りである。

企業向けアンケート概要
項目 内容
調査対象 中小製造業500社の経営者または採用担当者
調査方法 Webアンケート
調査地域 全国
調査期間 2019年6月29日~2019年7月16日
回収数 【従業員数50~99人の中小製造業】3大都市圏107、それ以外93
【従業員数100~299人の中小製造業】3大都市圏108、それ以外92
【従業員数300~999人の中小製造業】3大都市圏56、それ以外44
注1) 3大都市圏は、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、三重県、岐阜県、京都府、大阪府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県としている。
注2) 2節以降の分析では、実際の母集団の割り付けを反映させるため、「平成26年経済センサス‐基礎調査 企業等に関する集計」のデータを用いてウェイトバック集計を行った。
学生・就業者向けアンケート概要
項目 内容
調査対象 就職を考えている学生、または、18歳以上59歳以下の転職を希望している就業者(再就職を希望している失業者も含む)
調査方法 Webアンケート
調査地域 全国
調査期間 2019年6月29日~2019年7月19日
回収数 学生・就業者ともに3大都市圏とそれ以外で各125
注1) 3大都市圏は、企業向けと同様
注2) 2節以降の分析では、実際の母集団の割り付けを反映させるため、「平成28年度学校基本調査」、「平成29年就業構造基本調査」のデータを用いてウェイトバック集計を行った。

2.アンケート調査で明らかにする4つのリサーチ・クエスチョン

 アンケート調査では、以下の4つのリサーチ・クエスチョン(以下、RQと書く)を明らかにする。

RQ1 中小製造業はどのような職種で人が不足しているのか
RQ2 中小製造業はどのような採用活動を行っているのか
RQ3 中小製造業にとって人材を確保するための効果的な採用活動・環境整備は何か
RQ4 労働需要側と労働供給側の採用に関する認識にギャップはあるのか
(1)~(4)RQの検証結果

上に挙げた4つのRQの検証結果をまとめると以下の通りとなる。

RQ1 ・ 中小製造業の人材の不足状況は、技能人材で強く、事務職等で弱い
・ 上記の傾向は、企業規模に関係なく見られるが、非三大都市圏では事務の不足感も強い
RQ2 ・ 従業員規模が小さくなるほど、新卒・中途採用を実施していない割合が高い
・ 全体として、新卒採用よりも中途採用を実施している企業が多い。人材育成に係るコストが関係している可能性がある
・ 半数以上の中小製造業が女性・外国人・シニアの採用を重視していない
・ 非三大都市圏においては、従業員規模が小さくなるほど、外国人やシニアの採用を重視している。これは、立地地域の労働力が少ないことが背景にあると考えられる
・ 現在利用している媒体・手段は、、ハローワーク、自社ホームページ、学校訪問、従業員等の紹介の順に多い
RQ3 ・ 約4割の中小製造業が新卒採用と中途採用ともに確保できていない
・ 従業員規模が小さくなるほど、人材を確保できていない。一方で、立地地域による傾向の差はみられない
・ 新卒3年以内離職率は3割未満の企業が9割を占め、立地地域・規模による差はない
・ 新卒人材の採用には、「就業体験」、「紙媒体への広告の掲載」、「リファラル採用」が有効
・ 中途人材の採用には「自社Webサイトへの求人情報の掲載」、「リファラル(縁故)採用」、「就業体験」が有効
RQ4 ・ 学生と転職希望者ともに、企業が想定しているよりもワークライフバランス、休暇制度を重視している
・ 賃金水準については、学生は企業が想定しているよりも重視しておらず、転職希望者は企業と同程度に重視している
・ 企業は雇用の安定性を最も重要であると考えているが、学生、転職希望者ともにそれほど重視していない

第5章 インタビュー調査結果

1.インタビュー調査の概要

 以下のような企業・支援機関にインタビュー調査を実施した。

企業・支援機関名 本業等 概要
株式会社シノテスト 化学工業 ・ 多様な採用手法を取り入れ
・ 社員が経営層に社内環境の改善を提案する制度を設ける
しのはらプレスサービス
株式会社
生産用機械
器具製造業
・ オーダーメイド型の採用活動を実施
・ マニュアル化・データベース化による生産性向上
タカハ機工株式会社 電気機械器具
製造業
・ 学生のキャラを把握するための「自由」なインターンシップ
・ 福利厚生の充実、企業内託児所の設置、トイレ改修等の環境整備
根上工業株式会社 プラスチック製
品製造業
・ 学校訪問等に力を入れており、地元の大学出身者が多い
・ 残業時間の削減や福利厚生に充実に取り組む
HILLTOP株式会社 金属製品
製造業
・ 研究室訪問やインターンシップ、現場の社員が作る試験等を実施
・ 休暇制度等の福利厚生は、社員による提案を受けて整備
兵庫ベンダ工業
株式会社
金属製品
製造業
・ SNSや社員がパーソナリティを務めるラジオ番組で情報発信
・ テレワーク制度や育児手当、教育手当等、制度の充実をアピール
株式会社
マルイチ横浜
食料品製造業 ・ ポータルサイトへの企業情報の掲載、工場見学、高校への訪問、個別説明会、合同説明会を実施
株式会社三宅本店 食料品製造業 ・ 学内ガイダンス、合説等を実施
・ 休暇取得のしやすさや、残業の少なさをアピール
有限会社
ヤマカワ電機産業
電気機械器具
製造業
・ 現在はハローワークが主だが、様々な採用方法を検討中
・ 制度の改革を行うために、人事制度に明るい外部人材を雇用
A社 ・ 大学訪問、大学研究室の紹介、工場見学等を実施
・ 地域内では高水準な給与設定、評価制度の整備等を実施
B社 ・ 転職情報サイトへの掲載とハローワークでの募集が中心
・ ワークライフバランスをアピール
石川県産業創出
支援機構
・ 人材アドバイザーによる相談、人材マネジメントや最新技術に関するセミナーを実施
ジョブカフェちば ・ 求職者向け相談サービスやセミナーの開催、求人情報の収集及び掲載、社内勉強会等への講師派遣サービス等を提供

第6章 中小製造業の採用活動の成功のポイント

1.事例から浮かび上がる中小製造業の採用活動上の「成功」の捉え方

 インタビュー調査を踏まえると、中小製造業の採用活動におけるの成功とは、大人数を確保することではなく、省力化で代替できない技能人材を少数でも確保することである。

2.採用活動上の各取組における成功のポイント

採用活動上の各取組における成功のポイントは以下のようにまとめることができる。
ターゲットの
設定
・ 理念・ビジョンや自社の社風に照らし合わせて具体的に欲しい「人物像」のイメージを定義
  ➢ただし、厳密な定義を行うと、かえって優秀な人材を見落としてしまうリスクがある
  ➢実際に現場で働いている従業員から意見を吸い上げることも有効
・ 欲しい人材が固まったら、経営計画や事業戦略と照らし合わせて、求めるスキルや資格、経歴等を決定
  ➢海外展開を検討→語学力の高い人材が必要→外国人材の採用も視野に入れる 等
ターゲットへ
のアプローチ
(上段:アプローチ方法、下段:アピールする情報)
・ 合同説明会では、一方的な情報提供ではなく、学生一人一人との密な対話を心がける【新卒】
  ➢学生によって知りたい情報が多様化する中で、関心を持って来場した学生により関心を持ってもらうことに繋がる
・ インターンシップ、研究室訪問は技能人材の確保において重要
  ➢明確に「働くイメージ」を持ってもらいやすく、マッチングの齟齬も減らせるため採用に至った場合定着につながる
・ 工場見学、地縁を活かしたリファラル採用を積極的に実施することが有効【新卒・中途】
  ➢工場見学は、3K(きつい、汚い、危険)のイメージを抱く求職者の、懸念の払拭にもつながる
  ➢「地縁」は中小企業の強みであり、リファラル採用は、中小企業の採用手法として有効
・ 人材育成についてアピールすることは、特に新卒採用において有効
・ 特に新卒の確保において「働きやすい制度の整備」や人材育成のアピールは有効
  ➢新卒については、勤務経験がないため、人材育成制度について説明を行い、活躍に至るまでのイメージを明確化することで不安を低減
人材の選抜 ・ 面接を行う際は、何を見極めるのか事前に明確化し、本番では双方向的な対話を心掛ける
・ 現場の社員の面接への参加によって「現場」に馴染める人物かどうか見極める
労働環境や
人事労務制度
の整備
・ 製造現場の環境整備は、「汚い、危険」というネガティブなイメージの払拭につながる
・ 技能人材の安定的な確保には女性活躍促進に取り組む必要がある
  ➢女性は労働力の伸びしろ
・ 労働環境の整備は、中小製造業の「3K(きつい、汚い、危険)」といったイメージを払拭する上で重要
  ➢採用競争が激化する中で、人材を確保するには求職者の懸念を払拭する必要あり

3.中長期な視点で実施する必要がある取組

採用活動上の各取組における成功のポイントは以下のようにまとめることができる。
① 採用活動を通して、「学生のニーズ」を汲み上げ採用活動の質を改善 ・ 新卒採用においては、学生の価値観は時代を追うごとに変化し多様化するため、説明会や面接の場では、一方的な情報提供に徹するのではなく、学生との双方向のコミュニケーションを通して「学生のニーズ」を汲み上げることが重要
② 経営層と社員が採用戦略・労働環境整備を「共創」していくことが重要 ・ 価値観の変化に合わせて柔軟な制度設計をするためには、経営者自らのリーダーシップにおいて、管理職階ではない現場の社員と経営層が制度を「共創」するような仕組みを導入することが有効
③ 重要であるのは経営者と管理職階のマインドシフト ・ ①、②のような取組を行うためには、経営者や管理職階が価値観の多様化や少子高齢化といったマクロな変化が自社に及ぼす影響について、当事者意識をもって捉えること、従業員と経営層が事業を「共創」するような組織改革を受け入れられるようマインドシフトを行うことが重要

以上

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