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調査研究報告書

中小企業の成長要因
~グッドカンパニー大賞受賞企業の分析~

1. 調査の背景・目的

近年の我が国経済は、グローバリゼーションの急速な展開や、少子高齢化、過疎化・都市の一極集中など構造変化が激しく、大企業と比較して経営資源が不足している中小企業にとって、この変化に対応しながら良好な経営を保つことは決して容易ではない状況にある。
翻って、我が国中小企業の歴史を見ると、オイルショックやバブル崩壊、リーマン・ショックなど、経済的な難局に際し、時代の潮流に合わせて経営を行い、大企業へ成長した例や、中小企業としてあり続けながら高い競争力を誇り大きな世界シェアを獲得している例には枚挙に暇がない。こうした中小企業の成長要因や競争力の要因を明らかにすることは、今後、中小企業が成長の原動力や雇用創出の担い手等の役割を果たしていく上での参考として有益なものと考えられる。
そこで本調査研究では、我が国企業の売上高等の中長期的な推移を確認した上で、企業へのアンケート調査・インタビュー調査を行い、我が国中小企業の成長に効果的と考えられる取組について整理した。また、インタビュー調査は、当センターが1967年度より経済・社会的に優れた中小企業に対して贈り顕彰してきた「グッドカンパニー大賞」の受賞企業に対して実施し、企業成長や他社との差別化の源泉を分析した。

2. 調査方法

(1)文献・資料調査

政府統計から、我が国企業の企業数や売上高等の中長期的な推移を確認した。また、既存資料から、国内外で高いシェアを確保している企業について整理を行った。

(2)アンケート調査

グッドカンパニー大賞受賞企業を含む企業2,500社を対象にアンケート調査を実施した。

(3)インタビュー調査

過去にグッドカンパニー大賞を受賞した企業13社に対してインタビュー調査を実施した。

3. 調査結果

(1)我が国企業の中長期的動向・特徴

①企業数・常用雇用者数・売上高・付加価値額の時系列推移

(a)業種別
企業数・常用雇用者数・売上高・付加価値額について、産業全体に占めるサービス業の割合が上昇しており、製造業及び卸売・小売業の割合が低下している。ただし、付加価値額については、50年以上前から現在まで、製造業の割合がサービス業の割合を上回り続けている。

(b)企業規模別(全産業)
中小企業は、依然として企業数全体の99%以上、常用雇用者数全体の5割以上を占めている。売上高・付加価値額についても、中小企業の割合が一貫して全体の約半数を占めている。
また、対象を製造業の企業に限定して規模別に分析したところ、企業数全体・常用雇用者数全体に占める中小企業の割合は全産業と同様の割合で推移している。一方、売上高・付加価値額については、過去20年で中小企業の割合が30%前後に低下している。

②我が国中小企業における国内外でのシェア確保の状況

国内外で高いシェアを確保している中小企業を、中小企業庁「元気なモノ作り中小企業 300社」、「がんばる中小企業・小規模事業者 300社」、経済産業省「グローバルニッチトップ企業 100 選」より確認・抽出し、地域別・従業員規模別・分野別の分析を行った。
その結果、高いシェアを有する中小企業は各地域に相当数が存在しており、従業員規模の小さい企業も市場によっては高いシェアを獲得できることが確認された。分野としては、部品等、産業機械、その他製品の3分野で全体の8割を超えていることが確認された。

(2)成長企業の取組に関するアンケート

①アンケート実施要領

本調査研究で行った「成長企業の取組に関するアンケート」の実施要領は下表の通り。

図表1 アンケート実施要領
項目 内容
調査対象 企業2,500社
※うち、464社は当センターの「グッドカンパニー大賞」第1~40回受賞企業。ほか2,036社は、㈱東京商工リサーチの企業情報データベースから従業員数5,000名以下の企業を無作為抽出(ただし、第1次産業を除き、製造業が全体の95%となるよう割付)
調査方法 郵送配布・郵送回収
調査地域 全国
調査期間 2016年6月20日~2016年7月20日
有効回収数 317件(12.7%)

②アンケート集計結果

企業全体での集計に加え、直近3年間の平均的な年間売上高増減率(以下、売上高増減率)の水準別にクロス集計を行い、プラス成長・マイナス成長企業の取組の差異等を確認した。

(a)選択・集中、多角化
選択・集中または多角化の実施前に、自社の強み・弱みの分析(事業の見極め)、資金繰りや資金調達先確保、事業計画(戦略)策定等、各種検討を行った企業が、売上高を伸ばすことができていると考えられる。

(b)技術・商品開発
売上高増減率が高い企業では、継続的な技術・商品開発を行い、成長や差別化に結び付けていると考えられる。また、専門性のある大学や公的機関を活用して、自社で不足する経営資源を補いながら技術開発を行う企業が売上増加を実現できている可能性が高い。

(c)海外進出
コスト削減ではなく売上確保等の積極的な目的を持って海外展開した企業が、実際に海外での売上を確保して成長している可能性がある。また、親会社や納品先の意向で海外進出に至った企業に比べ、海外展開にあたり自社の強みやリスク等について主体的に検討を行った企業の方が売上高増減率が高く、事前に各種検討を行う必要があると考えられる。

(d)外部企業・機関の活用状況
継続的に外部の企業・機関を活用し、自社に不足する経営資源を補っている企業が売上高を伸ばしている可能性がある。特に、専門性のある大学や公的機関を活用して技術・商品開発を行っている企業において、成長を実現できていると考えられる。

(e)経営方針の社内浸透
売上高増減率の低い企業においては経営方針が浸透している割合が低く、経営方針浸透のための取組を行っている割合も低い。社員への説明不足により経営方針が社内に浸透していない企業では、活動の方向性を合わせられず、売上高を伸ばせていない可能性がある。

(f)社員の提案(アイデア)受け入れ体制
売上高増減率が高い企業では、積極的に社員の提案を受け入れる体制が構築されているが、その成果は主に作業効率の改善や社員のモチベーション向上であり、企業成長への効果は副次的となっている可能性がある。一方で、社員の提案事項を自社の技術・製品・サービスの強化に活用することで売上高を伸ばしている企業もある。

(g)社員採用・研修
学校等において自社のアピールを行っていない企業では、人材の確保が難しくなっている可能性がある。また、自社の成長及び他社との差別化を実現するためには、効果的に社員の技術力を高める研修プログラムの整備が必要であると考えられる。

(3)グッドカンパニー大賞受賞企業の分析

①グッドカンパニー大賞の概要

グッドカンパニー大賞は、全国の中小企業の中から経済・社会的に優れた成果をあげている企業に授与される賞であり、全国水準で優れた企業に贈られるグランプリのほか、優秀企業賞、特別賞、新技術事業化推進賞がある。1967年度以来、2015年度までに延べ632社に授与されており、多くの受賞企業がその後有力企業に成長しているため、各企業のこれまでの成長に向けた取組を分析することで、中小企業の成長に有益な示唆を得られると考えられる。

②財務データ分析

グランプリ受賞企業を対象に財務データ分析等を行ったところ、相当数の企業が、受賞時から2015年度にかけて、売上高、従業員数、従業員一人あたり売上高を高い率で増加させていた。また、2015年度において、高い売上高経常利益率を達成している企業も多く確認できた。相当数のグランプリ受賞企業が、高い成長性・生産性・利益率を実現している。

③受賞企業のアンケート集計結果

成長企業の取組に関するアンケートの結果をグッドカンパニー大賞受賞企業と非受賞企業に分けて集計した。非受賞企業と比較して際立っていた受賞企業の取組は以下の通りである。
(a)継続的な技術・商品開発
継続的な技術・商品開発によって他社との差別化を図っている。また、業績への寄与も多く実感している。

(b)積極的な知的財産計画の策定
知的財産計画を積極的に策定し、他社への特許侵害を防ぐことで滞りなく事業を進めている。

(c)積極的な海外展開と主体的な事前調査
積極的に海外進出しており、その目的も売上確保等の積極的なものが多い。また、海外展開・国内特化を決定する際、市場環境調査や現地調査等を主体的に検討している割合が高くなっている。

(d)継続的で多様な外部活用
様々な分野で外部活用を継続的に行い、技術・製品開発等において、自社の経営資源を補完している。

(e)経営方針の浸透
経営方針浸透に向けた取組に積極的であり、実際に浸透している。

(f)定期的な社員採用
採用活動を工夫して定期的に社員を採用している。

④企業インタビュー調査結果

グッドカンパニー大賞受賞企業に対するインタビューを行った。インタビューの対象先企業は下表のとおりである。

図表2 インタビュー対象先
企業名 本社所在地 業種 主要事業の特徴 成長に寄与してきた取組
株式会社
イシダ
京都府
京都市
はかり製造 コンピュータスケールで世界シェア5割超 自社技術向上や外部との技術提携により、既存の市場で製品の横展開。トータルシステムで差別化を実現。
エスペック
株式会社
大阪府
大阪市
精密測定器製造 規模拡大後も成長を継続し環境試験機で世界トップ 黎明期より環境試験器の開発を開始。アフターサービス等の顧客ニーズ対応で差別化。
株式会社
オギハラ
群馬県
太田市
金型・同部品等製造 国内金型業界で最大手 習得困難な金型技術が技術者に定着。早い時期からポリシーを持って独自に海外進出。
株式会社
スギノマシン
富山県
魚津市
金属工作機械製造 ウォータージェット加工で国内トップ 社員の自主性を重視。5つの超技術を基盤に持ち、周辺事業へ多角化。海外展開や外部活用にも注力。
ピジョン
株式会社
東京都
中央区
育児関連製品製造 大企業となった今でも売上・利益ともに高成長 商品が使われる場面の観察を基に哺乳の研究を継続。既存事業の周辺分野へ多角化。病院連携により国内外でブランド力向上。
株式会社
栗山米菓
新潟県
新潟市
米菓製造 多品種展開でブランド力向上 確立した商品ブランドで多種展開。社員のベクトルを合わせ、現場へ権限を移譲し、機動的に事業展開。
高砂電気工業
株式会社
愛知県
名古屋市
分析装置用バルブ・ポンプ製造 医療・バイオ分野の分析装置用樹脂電磁弁で国内シェア65% 顧客ニーズに対応する技術の引出しを蓄積。小規模展開から始めた海外展開で成功。
株式会社土谷特殊農機具製作所 北海道
帯広市
農業用機械製造 国内で十分な売上を確保した上で海外展開 既存資源を基に多角化。外部活用でコストを削減し、メンテナンスサービスにより顧客の信頼を獲得。
株式会社
東振精機
石川県
能美市
玉軸受・ころ軸受用ローラー製造 球面ころで世界シェア2割超 十分検討の上ベアリング用ローラー製造へ参入。ローラー製造用加工機械の自社開発及び外販で品質向上・顧客基盤確立。
株式会社
中山鉄工所
佐賀県
武雄市
建設機械・鉱山機械製造 ニッチな業界で大企業と協業しつつ成長 経営環境の変化に対応しつつ、既存技術を活かせる分野へ多角化。外部活用で過剰投資を避け円滑に事業を展開。
日本全薬工業
株式会社
福島県
郡山市
動物用医薬品製造 動物医薬品専業のメーカーとして業界トップ 研究から販売までの一貫体制を構築し、顧客と接点を持ちニーズ獲得。社内教育体制の整備により営業力強化。
未来工業
株式会社
岐阜県
安八郡
配線器具・配線附属品製造 継続的に経常利益率10%超 現場と多くの接点を持ち、収集したニーズを商品開発に反映。社員のやる気を重視し、無駄な残業を減らして差別化。
安田工業
株式会社
岡山県
浅口郡
金属工作機械製造 世界でもトップクラスの高精度製品を製造 創業以来の高精度へのこだわりが社内に根付き、技術開発を継続。景気後退のリスクを抑えるため産業機械分野へ多角化。

(a)リスクを考慮した選択・集中、多角化
大きく飛躍した展開はせず、既存事業の周辺分野へと多角化を行ってきた企業が多く確認できた。また、業容拡大ではなくリスク分散のための事業を多角化してきた企業も見られた。一方、トレンドを見極めて事業・製品の撤退等を判断し、選択と集中を進めてきた企業も確認できた。

(b)継続的な技術・商品開発
ほとんどの事例企業で、継続的な技術・商品開発により他社との差別化・自社の強みの強化を実現している。また、顧客ニーズに沿って取扱製品を増やす中で様々な技術を蓄積してきた企業が見られた。

(c)知的財産への取組体制を整備し、特許出願を判断
知的財産への取組体制を整備し、特許出願等を見極めてきた企業が多く見られた。また、他社の模倣を防ぐため、技術に関する知的財産は特許出願を避け、ブラックボックス化する企業も確認できた。

(d)リスクを抑えた海外展開
事例企業には、小規模から海外展開を実施した企業、海外展開前に外部企業を活用して市場調査等を実施した企業、自社単独ではなく他社と合弁企業を設立して海外展開した企業等が見られた。海外展開の際は、リスク管理や他社ノウハウの活用が重要と考えられる。

(e)外部企業・機関の活用による多様な効果
外部企業・機関を活用して効率的に取扱製品を拡大し、自社への技術蓄積を進めてきた企業が多く見られた。さらに、外部活用によって経営資源を自社の強みに集中させてきた企業も確認された。このほか、産学連携により、自社製品への学術的裏付けや信頼性の付加、ニーズ情報獲得、人脈形成などを狙う企業も見られた。

(f)学生採用戦略と研修制度の整備
事例企業では、学校説明会やインターンシップ等で自社の魅力をアピールし、学生の獲得を図っていた。さらに、特定の学校とコネクションを築き、継続的に人材を確保している企業も確認できた。また、社内資格制度を運用して社員のスキル向上を図っている企業や、海外進出を見据えて語学研修を充実させている企業も見られた。

(4)企業成長のために有効と考えられる取組

①選択・集中、多角化

(a)選択・集中
事業の選択・集中には、自社の主要技術を十分に活用し、他社の類似ビジネスの状況に加え、市場における技術優位性を確保できるか、その市場が大企業の立ち入らないニッチな市場であるかといった観点からも十分に検討を行う必要がある。上記の検討のほかに、自社の立地環境や業界の品質基準の改訂頻度等を加味することも重要である。
需要が落ち込んだ製品については縮小・撤退の判断が必要な場合もある。過去の主力製品であっても、法改正等によってニーズが伴わないものもあり、顧客企業のニーズのみならず、常に業界全体の動向を踏まえ、各製品への資源配分の見直しを実施することが肝要である。

(b)多角化
事業の多角化では、既存の経営資源を活用できる分野へと手を広げることがポイントである。これは、新しい市場における新しい技術や製品の展開は、保有技術の十分な活用が難しく、既存事業とのシナジー効果も発揮されにくいためである。また、多角化の際、自社内に不足する経営資源を外部企業との提携などによって補完することも重要といえる。
このほか、特定分野の落ち込みを吸収するためのリスクヘッジ策としての多角化も、企業存続の上で有効である。
製品の多角化では、顧客ニーズに応えるマーケットインの考え方が重要である。多角化にあたり自社で対応できない技術があれば、社内育成や外部活用など、技術難度に合わせた戦略が必要であろう。自社単独の対応範囲や外部提携で対応できる範囲を整理しておくことで、ニーズ情報へ迅速に対応することが可能になると考えられる。
また、売上がたたずとも温めておくことで、後に自社の収益の柱となる製品へと成長する可能性もある。財務基盤が安定していることが前提ではあるが、リスクを考慮しながら無理のない範囲で積極的に多角化して製品を温めておくことも、長期的な企業成長のために有効であると考えられる。

②技術・商品開発

継続的な技術・商品開発が、他社との差別化や自社業績の向上に寄与すると考えられる。事例企業では、自社単独での技術開発により技術の引出しを増やし、社内アイデアと相まって自社の技術力を高めてきた企業が見られた一方、外部企業や機関を活用することで、効率的に技術を蓄積してきた企業も確認できた。自社技術の性質や外部環境、タイミング等を考慮し、最適な方法で技術力を高めることが肝要であると考えられる。
また、開発にあたり、実際に自社製品が使用されている現場を継続的に観察することは、新たな課題の発見につながるため有効である。
このほか、異分野の企業と提携して技術開発を行うことも長期的な成長のために効果的であると考えられる。異分野事業に取り組むことで自社の視野を広げるとともに、異分野の技術が後の製品開発に活用できる可能性もあるためである。

③知的財産に関する取組

技術を持つ中小企業にとって、自社技術を守ることにつながるため、知的財産への取組体制の整備が重要となる。具体的には、知財を専任する担当者と弁理士等の専門家との連携体制の構築や、社内弁理士の設置が考えられる。また、知的財産に関する適切な管理体制を構築することで、特許等取得の要否の判断を正確かつ迅速に行うことができるようになり、特許侵害のリスクを抑えつつ自社製品を強化することが可能になると考えられる。

④海外展開・国内特化

(a)海外展開
売上確保等の積極的な目的を持った海外展開は、企業成長に有効と考えられる。また、海外展開に係るリスクに配慮し、事前に相当な検討を主体的に行うことも重要である。特に現地法人の設立など、本格的に海外展開を実施する場合は、現地の市場を入念に調査することが重要となる。実際に現地法人を立ち上げる段階では、まずは小規模で展開し、状況を見ながら段階的に事業規模を拡大する必要がある。初めての海外展開や、知見の少ない地域への展開であれば、他企業と合弁会社を設立するなどして、外部のノウハウを活用することも有効であると考えられる。

(b)国内特化
国内での売上を十分確保できているため、戦略的に国内にとどまる企業も存在している。介護・医療など、今後の国内における需要が伸びると考えられる分野で、あえて国内に特化することで、高い利益率確保を目指すことも企業成長のひとつの形であると考えられる。国内特化の際も、海外展開と同様に各種検討を十分に実施することが重要となるだろう。

⑤外部企業・機関の活用

(a)外部企業の活用
技術提携等による外部企業の継続的な活用は、効率的な製品拡大及び技術の蓄積に効果があると考えられる。このほか、外部企業に事務委託等を行うことで、自社の強みの部分に資源を集中させることが可能となる。また、異分野の企業と共同研究を行うことで視野を広げ、後の製品開発に活かしてきた企業も見られた。売上増加や他社との差別化を実現する上で、外部企業の多様で継続的な活用がポイントになると考えられる。

(b)産学連携
専門性のある大学や公的機関の継続的な活用が、自社の成長に結びつくと考えられる。産学連携により、自社製品に学術的な裏付けを付与することや、製品の詳細な試験を行うことができるほか、大学との共同研究により、将来的なニーズ情報の掘り起こしや技術蓄積も見込め、製品改良や新技術・商品の開発に有効となる。また、産学連携により構築される研究者や他社社員との人的ネットワークも、長期的な企業成長に寄与する可能性がある。

⑥経営方針の浸透

社員のベクトル合わせは企業成長の前提にあると考えられ、自社の経営方針を経営者や部門長等から社員へ定期的に説明することで、社員の方向性を揃えることが肝要となる。事例企業におけるベクトル合わせの工夫として、企業理念を実践できている社員の表彰や好事例の成果発表の実施、若手社員と経営者の対話や外国人社員のための企業理念の明確化等が確認できた。このような取組を通して、社員のベクトルを合わせることが、企業成長のための基礎づくりに重要となる。

⑦組織体制の見直し・仕組み作り

時代や商品構成に合わせた組織体制の継続的な見直し・変更が、企業成長に結び付く可能性がある。また、事例企業には、現場への権限移譲により意思決定の正確化・迅速化を実現した例や社員に経営意識を持たせて創意工夫を促している例が見られた。また、製造から販売までを一貫させて収集した現場ニーズを商品開発につなげた例や、現場で収集したニーズを開発部門が参照できる社内情報共有システムを整備している例も見られた。現場判断及びニーズ情報獲得・共有を重視する組織体制の整備が企業成長に有効と考えられる。

⑧社員提案事項(アイデア)の受け入れ

社員提案の受け入れ体制の構築が、社員のモチベーションや技術の向上、作業効率改善に重要である。具体的には、業務改善に係るアイデア公募制度の整備等が有効と考えられ、提案に対する報奨金やアイデア公募のための社内ネットワーク構築により、積極的に社員からの提案を促す取組も効果的であろう。社員によるアイデア提案は、組織の活性化・作業の効率化に結びつき、ひいては売上・利益の増加といった企業成長に寄与する可能性がある。

⑨社員採用・教育

(a)採用
学校での説明会や学生インターンの受け入れによって自社の魅力を学校等にアピールしている企業や、特定の大学や工業高校とコネクションを形成することで継続的な人材確保を実現してきた企業が確認できた。自社の成長に向けて適切に人材を獲得するため、特に新卒採用では学校や学生と積極的に接点を持つことが重要であると考えられる。
アンケートでは、市場ニーズに迅速に応えるため、あえて事業規模の拡大を目指さない企業も存在していた。やみくもに採用を増やして規模を拡大するのではなく、戦略的に自社の規模をコントロールすることで、高利益の企業体質を継続できる可能性がある。

(b)教育
事例企業には、外部研修や公的資格の取得支援、語学研修等、外部を活用して効率的に社員教育を行っている企業が見られた一方、社内資格制度を設立・運用することで、社員が各段階に応じて身につけるべきスキルを明確化し、社員のスキル管理やモチベーション向上に役立てる企業が見られた。外部活用による研修制度の効率的な拡充や、社内資格制度の構築による社員の目標管理により、効果的な社員教育を実現できると考えられる。

以上

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