公益社団法人 中小企業研究センターThe Medium and Small Business Reserch Institute
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調査研究レポート

中小企業における事業継続の取組

1. 調査の背景・目的

今後、発生が予想される首都直下型地震や南海トラフ地震等の大規模な災害を踏まえると、中小企業においても、これらのリスクへ備える取組が不可欠である。このようなリスクへの対策としてBCPの策定が挙げられるが、2011年3月に発生した東日本大震災をはじめとして、近年我が国において自然災害が多発するなかで、BCPの策定の重要性が認識されつつある。 しかし、我が国中小企業におけるBCPへの取組は、大企業に比して進んでいない状況にある。今後、自然災害の発生によって、多くの中小企業において、事業の長期中断・縮小や廃業に追い込まれる可能性がある。 一方、我が国中小企業の中には、BCP及びBCMへの取組によって、被災時に事業継続を可能にした例や、平時においても企業経営等に効果を発揮した例が確認できる。こうした中小企業の事業継続に関する取組を明らかにすることは、今後、我が国中小企業が事業継続に向けた取組を進めるうえでの参考として、有益なものと考えられる。 本調査研究では、文献調査、中小企業へのアンケート調査、及び事業継続の取組に積極的な中小企業・支援機関へのインタビュー調査から、中小企業がBCPやBCMに取り組むうえでのポイントを分析し、中小企業における事業継続に関する取組の実態を明らかにした。

2. 調査方法

(1)文献・資料調査

既存の文献や統計、過去の事例等を用いて、企業の事業活動に影響を与えるリスクやBCP及びBCMの概要を確認し、国内及び海外の事業継続に関する取組についての調査を行った。

(2)アンケート調査

中小企業2,500社を対象にアンケート調査を実施した。

(3)インタビュー調査

事業継続に関する取組を行っている中小企業9社、中小企業の事業継続に関する取組の支援を行っている公的機関2団体に対してインタビュー調査を実施した。

3. 調査結果

(1)企業の事業活動を取り巻くリスク

@事業活動に影響するリスク

企業の事業活動に影響を与えるリスクは、自然災害、感染症のまん延、自社設備の故障、従業員の離職や情報資産の紛失等、多岐にわたる。その中でも我が国は有数の地震多発地帯となっているほか、台風や豪雪等の発生により、世界的にみて自然災害が脅威であると考えられる。そのため、本調査では企業の事業活動を取り巻くリスクとして自然災害を中心に取り上げる。

A自然災害が事業活動へ与える影響

(a)自然災害が企業の事業活動に影響を与えた事例
2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震のように、局所的な自然災害がサプライチェーンを通じて広域に影響を及ぼした例が見受けられる。地震や津波による直接的な被害だけでなく、商取引を通じて広域かつ長期間にわたって波及する被害も存在する。

(b)今後発生することが想定される自然災害
南海トラフ地震や首都直下型地震等の発生により、広域に及ぶ被害が想定されている。

(2)企業における事業継続への取組

@リスクマネジメント

リスクマネジメントの手法としてはBCPやBCMが挙げられる。BCPの策定やBCMの実施はリスクへの備えだけでなく、ビジネスの獲得や維持・拡大へつながると考えられる。

A事業継続計画(BCP)及び事業継続マネジメント(BCM)

(a)BCPの概要
BCPとは、危機発生時に事業の中断を防ぐ防災対策に、事業の早期復旧に向けた視点を加えたものである。BCPは、欧米で先行した取組がなされており、我が国においては、2004年にBCPが本格的に認識され始めたとされている。
BCPの策定は基本方針の立案から始まり、重要商品の検討や被害状況の想定を行い、それらを踏まえて緊急時に必要な経営資源を確保するための事前対策を実施する。そして、災害発生時の対応や非常時の責任者の整理を行う。

(b)BCMの概要
BCMとは、BCPの策定・更新に加え、事業継続の取組のための経営資源の確保、取組の社内浸透に向けた教育・訓練、継続的な改善等を行う平常時からのマネジメント活動である。
BCMの運用も基本方針の立案から始まり、事業活動に影響を与えるリスクの分析・評価を実施し、経営戦略と整合性の取れた事業継続戦略の検討を行う。その後、リスクへの備えや教育訓練の実施計画とその見直し計画を策定して実践する。
BCMの陳腐化を防ぐためには、BCP・BCMの内容や実施状況等の点検・見直しを定期的に行い、取組を改善する必要がある。点検・見直しの結果を基本方針の立案から実施計画の策定までの各プロセスに反映させ、徐々に事業継続能力を向上させることが重要である。

(c)BCP・BCMの連携
2011年に発生した東日本大震災では、個社レベルで製品の生産能力が回復しても、サプライチェーンが復旧しないことが問題視された。事業の早期復旧・継続をより確実なものにするためには、取引先等との連携を拡大する必要があると考えられる。
同地域間・同業者間の連携を行うことで、代替生産を可能にするなど、BCMをより実践的なレベルに高めることができると考えられる。また、官公庁・指定公共機関と連携して、事業継続に必要な情報の入手訓練を実施することも重要である。

(d)中小企業のBCP・BCMへの取組状況
先行研究では、我が国の中小企業において、BCPを認知している企業の割合が7割程度となっている。また、BCPを策定している企業の割合は4割弱となっている。従業員規模別にみると、従業員規模が小さくなるほど認知度は下がり、策定している企業の割合も減少する傾向にある。
BCPを策定する動機として、リスクが顕在化して実際に事業に影響が生じた経験をもつケースのほか、経営者による経営判断があったこと、顧客への供給責任を重視したことや、リスク管理に意識を払う社風があったことを挙げる企業が多い。BCPを策定しない理由としては、スキル・ノウハウの不足や人手不足を挙げる企業が多い。
BCP策定済みの企業のうち、BCMを実施している企業は7割程度で、定期的な再検討や従業員教育・訓練、マニュアル策定による見える化等が実施されている。
リスク発生時におけるBCP・BCMの効果として、被害自体を避けられなくとも、その後の従業員との連絡の早期化や事業の継続が可能となることが挙げられている。また、平常時においても、経営資源の把握、人材育成や社内コミュニケーションの改善等が挙げられており、自然災害等が発生していない平時にも、企業活動上有益な効果が生じると考えられる。

(3)中小企業における事業継続計画への取組状況の調査

@アンケート調査

(a)アンケート実施要領
本調査研究で行った「中小企業の事業継続の取組に関する調査」の実施要領は下表の通り。

図表1 アンケート実施要領
項目内容
調査対象企業2,500社
※鞄結桴、工リサーチの企業情報データベースより無作為に抽出。ただし、製造業と非製造業の比率を1:1として割付。
調査方法郵送配布・郵送回収
調査地域全国
調査期間2017年6月1日〜2017年7月27日
有効回収数251件(10.0%)

(b)アンケート集計結果
回答企業全体での単純集計を行うとともに、従業員規模等でクロス集計を行い、事業継続に関する取組の状況を確認した。

@.リスクへの備え
想定しているリスクとして、7割以上の企業が地震、設備の故障や人手不足をリスクとして想定しており、想定するリスクへの備えについても、6割以上の企業が非常時における社内の連絡体制の整備や中核事業の特定を実施している。文書としてのBCPを持っていなくても、リスクを想定し、想定したリスクに備える中小企業が存在していると思われる。
一次下請に位置する企業において、各種リスクへの備えを実施している企業や、BCPを認知して必要性を感じている企業、非常時における取引先等との連絡手段・連絡先を定めている企業が多くみられた。さらに、製造業の企業において、販売先における代替調達の検討が進んでいる企業が多くみられたことから、製造業界のサプライチェーンの下流に位置する企業では、販売先である元請のメーカーからの要請でBCPの取組が進んでいる可能性が考えられる。
想定するリスクへの備えについて、負担が小さくすぐに取り掛かれる取組については、多くの企業が実施している一方で、実現に向けて労力や資金を要する取組を実施している企業は少ない傾向がみられる。
A.BCPの認知・策定状況及び策定の動機
BCPを認知している企業は全体の半数程度であり、BCPの策定を完了している企業は全体の1割強と少ない。 従業員規模の大きな企業ほど、BCPを認知してその必要性を感じたうえで、実際に策定していると考えられる。 多くの中小企業が、東日本大震災をはじめとした自然災害の発生をきっかけに必要性を感じ、BCPの策定や検討に取り組んでいる。また、経営層の判断によりBCP策定に取り組んだ企業も一定数確認できた。
B.BCP・BCMの取組
BCPに基づく投資内容として、災害時用通信方法の準備や機械等の転落・落下防止措置の実施、バックアップやクラウドサービスの利用を行う企業が多くみられた。一方、事務所の不燃化等の大規模な設備投資を要する取組や社外連携に関する取組はあまり進んでいない。 BCMの実施内容として、定期的な避難・救助訓練の実施や、BCPの理解浸透のための従業員教育を行っている企業が多くみられた。
C.BCP・BCMの効果
事業の継続や従業員との連絡の早期化等のリスク発生時の効果だけでなく、経営資源の把握、人材育成や経営陣・従業員間のコミュニケーション改善等の平時の効果があると考えられる。
D.BCP・BCMの課題
BCP策定の状況に拠らず、事業継続に関する取組において、スキル・ノウハウの不足や人手不足が課題となっていると思われる。
E.外部機関等からの支援・サービス
スキル・ノウハウの習得のための基礎的なセミナーや支援を求める企業が多いと思われる。

Aインタビュー調査

既存の資料等から事業継続の取組を行っていることを確認できた企業に対して、BCP・BCMに関するインタビューを行った。インタビューの対象先企業は下表の通りである。

図表2 インタビュー対象先企業
企業名本社所在地業種主要事業事業継続に関する取組
天草池田電機株式会社熊本県上天草市製造業電磁リレー・センサー・ソレノイドの製造、照明機器の開発・製造・販売従業員自らが小さな工夫を積み重ね、費用を掛けずにBCPを改善。経営戦略的な視点から、BCP策定事業を人材育成の仕掛けとして活用。
伊藤石油株式会社三重県尾鷲市小売業ガソリンスタンド運営、石油製品販売従業員の連絡先リストの作成や備蓄の整備に加え、業界団体との連携で非常時を想定した訓練を実施。
株式会社生出東京都瑞穂町製造業緩衝材・包装資材の設計・製造・販売年間の経営計画に組み込んだBCMSを運用し、その事業継続力が評価されて新規案件を獲得。経営トップが本気になり、従業員を巻き込みながらBCMSを独自に実践。
株式会社オイルプラントナトリ宮城県名取市廃棄物処理業産業廃棄物処分業被災後、BCPに基づいた優先復旧事業の取捨選択や代替生産体制の活用によって、早期事業再開・売上増加を達成。
皆成建設株式会社宮城県仙台市建設業建築工事業BCPに基づくリース会社等との事前協定により被災後も事業を継続。増加する復興需要にも対応。
金剛株式会社熊本県熊本市製造業金属製家具製造業自社工場の被災を機に、各部署の社員を交えながらBCPを策定。従業員のメンタル面を考慮した安否確認も実施。
株式会社主婦の店三重県尾鷲市小売業スーパーマーケット津波被害に備えて避難計画策定や避難訓練に取り組み、CGCグループと物資の融通や情報システムの共有等で連携。
伸東測量設計株式会社静岡県沼津市専門・技術サービス業建設・補償コンサルティング、測量・調査・設計業拠点間の事業の代替や相互バックアップを可能にする仕組みを構築。平時における業務の効率化にも活用。
A社首都圏製造業銅合金板・条の製造・販売東日本大震災の後、販売先の部品メーカーからの要請でBCPを策定。中小企業で対応可能な範囲で、非常時のリスク想定や連絡体制の整備等を実施。
@.BCPに取り組んだ経緯
BCP策定に取り組んだ経緯として、大規模地震の発生による必要性の認識や、外部機関の支援事業への参画、販売先メーカーからの要請を挙げる企業がみられた。
A.BCP・BCMの取組
事業継続に影響を与えるリスクとして地震を想定している企業が多くみられた。具体的な取組として、災害時の連絡体制の整備や、地震による社内設備や備品の転倒・落下防止、代替インフラの確保、サーバーや重要書類の保護、備蓄の用意等が多くの企業で実施されていた。また、複数の企業で公的機関や取引先等と連携を行っていることを確認できた。
中小企業では大企業と比して経営資源に制約があることを前提に、現実的に実施可能な取組を選んで行う企業もみられた。
B.BCP・BCMによる効果
有事の際に、事業の迅速な復旧だけでなく、売上増加や事業拡大といった効果を実感している企業が確認できた。また、平時においても、社内コミュニケーションの活性化、業務効率化や事業の拡大といった効果を実感している企業がみられた。
C.BCP・BCMに取り組むうえでの工夫
BCP・BCMを経営的な視点で捉えている企業がみられた。また、非常時におけるBCPの実効性を重視する企業も多くみられ、そのために従業員を巻き込んだ取組を行っている企業も確認できた。さらに、人材育成の仕掛けとして従業員を公的機関の事業へ参画させた企業や、BCP・BCMの取組が売上増加に繋がった経験等から、事業継続の取組を年間の経営計画に組み込むことでBCPに取り組まざるをえない仕組みを作り、BCMを継続させている企業もみられた。

(4)中小企業における事業継続への取組に対する支援・取組

@我が国の公的機関による支援施策・取組

(a)被害想定の公開
今後発生が予想される地震の被害想定や、各種災害に関するハザードマップ等の公的機関が公開している情報を活用することで、自社周辺地域の災害リスクを確認できる。

(b)公的機関による代表的な支援施策・取組の紹介
中央官庁や地方公共団体では、中小企業のBCP策定の普及を促進することを目的としたガイドラインの作成、支援セミナーの開催や専門家の派遣等の取組を行っている。

(c)公的機関における具体的な取組事例
BCPの支援施策や関連する取組を行っている公的機関として、愛知県碧南市にインタビューを行った。当市では、企業におけるBCP導入段階のステップになることを目的に、人命保護のための避難マニュアル作成に取り組んだ。避難マニュアル策定により、被害想定を知らずに様式に当てはめて作ったBCPでは、実態として事業継続につながっていない可能性があることがわかった。BCPの策定過程では企業の内部機密に触れざるをえず、行政の関与にも限界があり、可能な限り企業内で策定を進めてもらう必要があると考えている。

A我が国の民間団体による支援施策・取組

(a)民間団体による代表的な支援施策・取組の紹介
商工会議所・商工会や業界団体が、BCPの取組を促す講座を実施し、BCP策定を支援するマニュアルやツールを公表している。事業継続に関する取組を評価して融資等で優遇する金融機関も存在する。

(b)民間団体における具体的な取組事例
BCPの支援施策や関連する取組を行っている民間団体として、三重県の尾鷲商工会議所にインタビューを行った。同商工会議所では、地域全体の防災力を高めるため、2013年度に地域企業における異業種間連携の働きかけを実施した。この事業以降、毎年度、講習会・ワークショップへの参加やセミナーの開催といったBCPに関する取組を行っている。
取組を通じて、参加企業のBCP策定や事業継続への理解の充実につながり、BCPが経営的なメリットを必ず含むことを実感した一方、有事における行政との連携と企業間連携の優先順位の問題から、地域連携を単純に進められないことも分かった。企業が自主的にBCPへの取組を進めることを待つのではなく、中小企業を取り巻く関係各所から働きかけるやり方もありうると考えている。

B海外の公的機関や民間団体による支援施策・取組

(a)各国・地域における動向
米国においては、国土安全保障省が「Ready Business」というウェブサイト上で、企業の事業継続力向上のためのツールを提供している。中小企業向けには、中小企業庁が民間企業と連携して「Prepare My Business.org」というウェブサイトを立ち上げ、ウェブセミナーを実施し、事業継続力向上のための各種フォーマットの提供も行っている。民間団体では、1988年に発足したNPOのDRIIが、事業継続の専門家認定制度の運営、事業継続に関する教育プログラムの提供や、コンファレンス開催による専門家間のネットワーク形成を行っている。
英国では、1994年に設立された事業継続協会(BCI)がガイドラインを策定しているほか、事業継続の専門家の認定制度を運営している。BCIは英国規格協会とともに事業継続の規格「BS25999」を策定し、現在では国際標準規格となっている。
また、APECの中小企業ワーキンググループでは、中小企業向けのBCP策定のガイドラインを発行している。

(b)事業継続に関する国際標準
事業継続の国際標準規格は、「BS25999」を基にISOが発行する「ISO22301」である。我が国では2017年11月時点で91組織が認証を受けており、なかには中小企業も存在している。

(5)中小企業の事業継続への取組拡大に向けて

@事業継続の取組における段階ごとのポイント

(a)BCPを認知し、策定の意思決定を行うまでの段階
我が国の中小企業における事業継続の取組は依然として進んでいない。自発的な取組が進まない場合は、中央・地方の行政機関、業界団体、地元有力者、取引先、取引のある金融機関といった、中小企業を取り巻く関係者からBCP策定を働きかけることで、事業継続の取組を促せる可能性がある。実際に本調査研究では、入り口段階として実現難易度の低い取組を地域企業に促す地方自治体や、製造業界において仕入先の中小企業へBCP策定を要請する企業がみられた。

(b)BCPを策定する段階

@.策定方法
BCPを策定しようとする企業におけるノウハウ・スキルの不足や人手不足への対応策としては、公的機関が実施するBCP策定支援のコンサルティング事業への参画が有効となる可能性がある。
一方、このようなコンサルテーションは、大企業や中小企業のなかでも規模の大きな製造業への支援をベースにしている場合が多く、コンサルタントが中小企業の事業の現場に慣れていない場合もありうるため、支援内容を各社の実態に合わせることができず、支援の実効性に一定の限界が生じることがある。中小企業が自社向きのアドバイスを受けるためには、コンサルタントと話し合う場をある程度の期間・頻度で設け、コンサルタントと現場の従業員がしっかりと対話し、中小企業の事業について理解してもらう必要があるだろう。
また、コンサルティング支援事業に参画する前に、経営層と従業員とがコミュニケーションを取り、事業継続に向けた意識を社内で共有し、支援事業に現場の従業員を参画させる体制を整えるなどの準備も必要であろう。
このように、コンサルティング支援の導入は、支援の期間や頻度に加え、自社の規模や業種に合った支援を受けられるかどうかを確認し、支援の受入体制を整えたうえで行うことが肝要であると考えられる。
A.策定内容
地震等の自然災害による被害を想定する際は、行政の示すハザードマップ等の被害想定や避難計画が基になる。しかし、東日本大震災における津波被害のように、公的機関がハザードマップ等で想定していなかった被害が発生することもある。
想定外のリスクへの対応としては、生産拠点のバックアップや代替従業員の確保等、経営資源の代替調達の取組が有効となる可能性が高いが、そのような取組は、経営リソースに制限のある中小企業にとって現実的ではない場合がほとんどである。
このように、中小企業にとっていきなり網羅的なBCPを策定することは難しいため、費用をかけず、実現可能な範囲で、最低限必要と思われる取組から実施することが重要であると思われる。実現可能な取組を積み重ねるだけでも事業継続力を高められることを認識し、まずは小規模な取組から始める姿勢が重要である。

(c)BCP・BCMの内容を充実させる段階

@.トップダウン
BCPには、取引先の優先順位付けや同業他社との代替生産体制といった重大な経営判断を含むものが多い。BCPを経営全体に関わるものとして捉え、最終的に社長クラスの経営層が参画しなければ、BCPの取組内容にも自ずと限界が生じると考えられる。経営トップが本気で取り組むことで、BCP・BCMが充実した内容になると考えられる。
A.従業員の参画
公的機関や民間団体が公表するひな型等を非常時に有効に機能させるためには、現場の従業員がBCPの内容を把握し、非常時の行動の指針となる内容にしなければならない。 従業員の関与を促すためには、BCPコンサルティング事業に現場の従業員を参加させるなど、BCP策定に従業員を巻き込む仕掛けを準備することが有効であろう。
B.社外連携
被災した企業だけでは復旧できない事態に対応するため、BCP・BCMにおける連携を進めることは重要である。 しかし、BCP・BCMにおける連携には、他企業の機密事項に触れられないという制約や、企業間でBCPの認知度や取組段階が異なり足並みを揃えにくいという実態がある。そのため、連携対象企業の理解度をみながら、取り組みやすい難易度に調整したり、賛同を得やすい取組に限定したりする必要がある。
C.継続
BCMの難しさはマンネリ化を防ぎながら継続させることにある。年間の経営計画に落とし込んで取り組まざるをえない仕組みをつくり、会社全体のマネジメントのなかで運用することで、BCPの実効性を維持しつつ、経営的なメリットも受け続けられると考えられる。

A事業継続の取組による経営的な効果の発揮

BCP・BCMは、被災時・平常時を問わず、事業拡大等の経営的な効果をもつことがある。これらの効果は、中小企業が事業継続の取組を前進させる際の動機になりうると考えられる。
事業継続の取組により経営に資する効果を実感している企業には、BCP・BCMを経営戦略のなかで捉えて経営層が本気で参画している点や、BCP・BCMの社内浸透のための工夫を講じている点が共通している。そのため、経営トップから従業員までを巻き込む全社的な取組によって、BCP・BCMが経営的なメリットをもつことを中小企業に周知・共有することで、中小企業における事業継続の取組拡大を促すことが重要であると考えられる。

以上

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